This post is also available in: 日本語 (Japanese)
「人工知能」とか「ムーアの法則」「シンギュラリティ(特異点)」などのキーワードが好きな方にはおすすめの本で、NHK BS特集「未来への提言」で紹介された事でも有名です。
著者のレイ・カーツワイルは有名な発明家・思想家・未来学者で、いわゆる天才と言われている人物です。
一般的に良く知られているムーアの法則によるコンピューターチップの性能向上により、人間の脳の処理能力に追いつくという話から始まり、著者の提唱する収穫加速の法則(発明が増えれば増えるほど、さらに新しい発明が生まれる速度が指数関数的に増えるという法則)の話へと移ります。
この本の面白いところは、そのような内容を科学的に具体的なデータとグラフを用いて明確に説明している点にあります。
ポスト・ヒューマン誕生―コンピュータが人類の知性を超えるとき
人間の脳は、非常に効率の悪い、電気化学的なデジタル制御のアナログコンピューティング処理を用いている。脳の計算の大半は、ニューロン間結合(シナプス結合)によって行われ、毎秒約200回の計算速度しかない(ひとつの結合ごとに)。
これは、現在の電子回路の速度より100万倍以上も遅い。
しかし、人間の脳は三次元の超並列組織を構成していることから、驚異的な力をもっている。
(P85)
その後、量子コンピューティング、人間の脳のコンピューティング能力、人間の脳のリバースエンジニアリングなどといった話題に続きます。
調べようと思ってもなかなか調べにくい情報と知識が満載です。
ナノボットを用いて脳の内側からスキャンする必要がある。ナノボットのテクノロジーは、2020年代の終わりには利用可能になっているだろう。
―(中略)―
控えめに見ても、2030年代の終わりというのが、(脳をスキャンした情報を)アップロードの成功が予想される時期である。
(P244)
脳をスキャンした情報をアップロード...と聞くとSF(サイエンス・フィクション)の世界のようにしか思えませんが、ナノ・テクノロジーによって人間の体内を自由に行き来できる機械である「ナノ・ボット」が2020年代の終わりには利用可能になっているだろうと説明されていますから、実際に実現する可能性は高いのだろうと思います。
また、収穫加速の法則によってGNR(ゲノム・ナノ・ロボットの頭文字で遺伝子工学・ナノテクノロジー・ロボット工学)の技術がどのように進化していくかなどが語られます。
単に読み物としても、注目の技術から生まれる可能性を学ぶという意味でも非常に面白い本です。